読書感想文の書き出し例【中学生・高校生】入賞21パターン

読書感想文を書く場合、書き出し(書き始め・出だし) でつまづき「ぜんぜん先に進まない」という状態に陥りがちです。書き出しがスムーズにいけば、それに続く文章も書きやすいものです。感想文を書くコツの一つは、書き出しのバリエーションを知ることにあります。

読書感想文の構成(何を+どの順番で書くか)には、書きやすいパターンがありますが入賞しやすい「書き出し」にもいくつかのパターンが存在します

今回は、過去の入賞作品の中から応用しやすい「書き出し」21パターンを選んで紹介してみました

おもに中学生高校生が読書感想文を書くことを想定していますが大学生社会人の方にも活用できる内容です。定番の書き出しから、やや奇をてらったインパクト重視の書き出しまでありますが「応用しやすい書き出しの例」という点に重点をおいて21パターンを紹介しています。

紹介した例文は、そのままコピペして使っても構いませんが、ぜひ「原型が分からなくなるほど」修正し、自分の言葉にしてください。それが理想です。
 

読書感想文の書き出しの例(書き始めの例)21パターンとは?

自分なりの書き出し方が思いつかない場合は次に掲げる書き方を参考にしてみましょう。

目次

 
以下では、それぞれの書き方を解説していきます。

【追記】解説を省略し「例文の部分だけを見やすくまとめたページ」も作りました。
読書感想文「書き出し例文」一覧 
 

「この本を選んだ理由」からはじめる

【書きやすい標準型】⇒「そんな私」でつなげる

これは、その本を読むあなたの、いわば「自己紹介」で始めるパターンです。読者であるあなたの最近の「疑問」や「悩み」「関心」「立場」などをまず紹介し「そんな私」につなげることで、関連したその本を選んだことに根拠を与える方法です。

「この本を選んだ理由」は、感想文を読む側も関心のある部分ですので、このような書き出しは、どのジャンルの本の感想文にも使える標準的な書き出しといえます。

【標準型】
いつのころからか、私はニュース番組などで、○○の話題が取り上げられるたび疑問に思うことがあった。それは、なぜ○○とは○○なのかということである。そんな私であるため、感想文を書くため本を選ぶ際、真っ先に浮かんだのが、この○○について書かれたベストセラーを読んでみることだった。この本は・・

 
読む前の「あなた」を冒頭部分で紹介すれば、読了後の「あなた」の変化(成長・学び)とを比較できるため、感想文の読み手にその変化を分かりやすく伝えることができます。
 
バリエーションの例としては・・・

・「そんな私が、偶然書店で手にしたのがこの本でした。」
・「そんなときに出会ったのが、この本でした。」
・「そのとき偶然目にとまり、手にしたのがこの本だった。」
・「そんな自分に、一つの光をあたえてくれたのがこの本でした。」
など

【例文】
今年の二月、僕は自宅近くの公園で仔猫を拾った。真冬の寒さの中、放っておくとすぐに死んでしまいそうなほど、か細い声で鳴いていたのだ。猫を飼った経験がなかったため、仔猫にはどのような餌を与えていいものかも分からず、すぐに近くの書店に駆け込み、役に立ちそうな本を探した。

知りたい情報は立ち読みで済んでしまったのだが、そのとき近くにあった本に目がとまり、偶然手にしたのがこの本だったのだ。僕は仔猫の看病をしながら、その日のうちに一気に読み終え、これまでにないほどの大きな感動を得ることとなった。今になって思えば、その仔猫は、僕をこの本に引き合わせてくれた、まさに「招き猫」そのものだった。この本は、世界で初めて、動物が人に与える癒しの効果を・・・

 
このように、感想文の冒頭部分で、その本との出会いを「運命的な出会い」であるような演出をしてみることも検討してみましょう。ドラマチック性を高めるシナリオの王道である「そんな私」+「偶然の出会い」の演出を読書感想文で利用してみるわけです。

・・ま、ここまでドラマチックにしなくても、初めに紹介した標準的な例でも、この本を選んだ理由を伝えることはできます。
 

最近の「疑問」や「悩み」の紹介から入るのと同じように、読者であるあなたの「最近の関心事」を紹介することで、その本を選んだ理由にすることもできます。話題や事件などニュース性のあるものを引き合いに出した場合、文章に勢いがつきます。

【例文】
世界中で新型コロナウィルスが蔓延する現在、先進国のほとんどの国で80年前の本が再びベストセラーになっていることを知った。

その本では都市封鎖や感染者への差別など、現在各国で見られる「現実」が、あたかも現在の世界を取材して書いたのではないかと思えるほど酷似した内容で書かれているというのだ。

そのため、一部では「予言の書」とまで呼ばれていのだという。私はニュースでその事を知り「予言の書」なるその本を読まずにはいられなくなり、すぐにネットで注文した。

その本こそが、フランスのノーベル文学賞受賞者、アルベールカミュによって書かれた『ペスト』である。この本は・・・

カミュ「ペスト」読書感想文の書き方と例文【動画解説つき】

 

その本が自分にとって特別な本だから選んだことにする

この方法は長年読み継がれているロングセラー本などに使える方法ですが、昔読んだときの感想と、今回読んだ時の感想を対比しながら感想文を書く方法です。

【例文】
私がこの本を読むのは、実はこれが4回目になります。初めに読んだのは小学校6年の夏休みでした。当時の私には、使われている表現や内容が難しく感じられ、本来的に著者が伝えようとしていた大切な部分すら分からずに読み終えてしまいました。

読解力の乏しい当時の私でしたが、どうにも心に残る登場人物のセリフがあったため、そのセリフを口にするにいたった背景を理解しようと、すぐに2度読み返した本だったのです。

年月を経た今回、改めて読み返えすことにしたのは、子供のころの私に影響を与えた思い出深い本だからという理由と、私にとって「感性の成長を知る手掛かり」になる唯一の本でもあったからです。

 
・・・このような「理由」があるのであれば、その本を選んだことに納得せざるをえません。また、同じ部分で「過去の自分」と「今の自分」の感想を対比させながら書けるため、感想文の文字数が稼げる書き方でもあります。(^∇^)″ 
 

「カミングアウト」で始め、興味づける例

同情をひくカミングアウトは、読書感想文の高評価の裏ワザ

自分が言いにくい「心の闇」や「恥」をカミングアウトする内容は高得点の鍵。これも、読者であるあなたの「自己紹介」から始める例の1つといえます。

例えば「私には病気の弟がいる」とか「私の父は本当の父ではなく・・」などから始める書き方です。

これらは本来ならプライベートな内容であり、他人に伝えなくてもよい内容のはずですが「そこをあえて」読書感想文の中でカミングアウトすることで「カミングアウトポイント」とでもいうべき高評価が得られやすくなるのです。(必ずそうなるわけではありませんが・・)

そのため毎年、勝手に親戚を殺したり、居もしない親戚を登場させたりする生徒さんもいるようですが、なるべく本当のことだけを書くようにしてください。(笑)

特に課題図書の定番ジャンルとして毎年選定される「命の大切さ系」の本や「コミュニケーション障がい系」「弱者保護系」「闘病系」「差別をなくそう系」「いじめ問題系」「愛情欠乏系」の内容の本には、この自分や身内の不幸をカミングアウトする内容は高得点につながります。

【入賞作品の例①】
私は筋ジストロフィーで、一歳から六歳までずっと入院し、歩けたのは七歳になってからだ。周りはお医者さんや看護師さん、そして家族。友達は誰もいなかった。やっと退院し家に帰れた時、私は家族と一緒に居られる、ただそれだけで嬉しかった。けれどやはり友達が欲しかった。友達と遊びたかった。話したかった。家族はとても私を大切にしてくれたけれど、私はそれでも自分だけが外の世界から切り離されているようで淋しく辛かった。

 

【入賞作品の例②】
僕は自分を尊敬することができない。周りの人間から何かについて誉められたとしても、「それは過大評価だ」と思ってしまう。ともすれば、「皮肉として言っているのではないか」と邪推してしまう事さえある。だからといって僕は、辛辣な言葉を掛けられた訳でも嘲笑された訳でもない。ただ、そっとしておいてほしいだけなのである。過剰な期待や信頼は、それが破綻してしまった際のリスクが大きい。それに、そのリスクが降りかかってくるのは、いつも決まって期待「される」側だ。 

僕は、自分の考えが正しいとは思っていない。そもそも僕は、誰からも誉められていなかったかもしれないし、誰からも期待されていなかったかもしれない。ただ僕が、そう思い込んでいるというだけの話だ。そんな不毛な事を考えている時、僕は「地下室の手記」を読んだ。そして・・・・・・

 

【例文】
私は読書感想文の宿題が出されるたび、いつも恥ずかしい思いにかられる。それは、私の本の読み方が多くの人のそれとは違うためだ。

私の本の読み方は、本の内容をそのまま受け入れるということがまったくなく、物語の場合なら「ここでこういう展開だったら、もっと面白かったのになぁ~」とか「こうすれば作者の思いが、もっと伝わったはずなのになぁ~」などという「空想」を働かせながら読むことを楽しみにしているからだ。

そのため、どこの部分でどのように空想したかを正直に発表してしまうと、あたかも自分のことを心理分析されるような「恥ずかしさ」でいっぱいになるのだ。

その空想とは、多くの場合、倫理的に正しくなかったり、いじわるな性格な人間としか思えないものであったり、とても読書感想文として高い評価を期待することは難しいものばかりなのだ。

ただ、救いとしては、自分自身でも「感想文としては不適切である」と理解できていることである。つまり、本来的に好ましい感想文というものも客観視できる状態であるため、まったく社会性のないダメ人間ではないことが一応自分でも分かっている点が救いというわけだ。

そんな私であるため、今回読んだ、この『○○』につての感想(空想)を、恥ずかしさをこらえ書かせていただければ、この作品は・・・

 
 

本の内容に対して書きたい感想がたくさんある場合「この本を選んだ理由」や「自己紹介系の書き出し」については省略してもかまいません。

内容に対して書きたいことがたくさんある場合、次に紹介する「あらすじ(や概要)の紹介」から書き始めるスタイルが、書きやすい標準的な書き方といえます。
 

あらすじの紹介からはじめる

「この本は~」「この物語は~」から始め、本のあらすじや概要を紹介したあと「私はこの本を読み」につなげる感想文は、どのジャンルの本にも使える、代表的な感想文の書き出し方の1つです。

「この本は」+「私はこの本を読み」

【構成例】
この本は(あらすじや概要の説明)
私はこの本を読み、○○について生まれて初めて真剣に考えさせられることになった。
③特に印象に残った部分は・・・
④最近のニュースでも・・・
⑤私も以前・・・
⑥これらは、この本の○○で書かれていた○○の○○と同じような原因によるものだと思う。
⑦このテーマに対し、これまでの私は○○という考え方をもっていたのが・・・
⑧おそらく著者は、読者に○○の大切さを伝えようとこの本を・・・
⑨私は本書を読み、○○について・・・という、これまでの考え方を反省させられた。
これからは、○○について、○○という視点からも捉えるようにしたいと思う。

基本的な構成の例はこちら
読書感想文の書き方と構成【中学生・高校生】テンプレート付
(気になる審査基準も掲載!)

 
※「あらすじ」+「私はこの本を読み、特に印象に残った部分が3箇所ありました。」・・のように数を明示するスタイルも書きやすい構成です。それらの箇所を一つ一つ説明し、最後に「まとめ」としての「学びや反省」を書けばシンプルに完成させることができるからです。
 

冒頭部分をそのまま紹介してはじめる

「○○○○○○○○○○」という書き出しで始まるこの小説は・・式の書き出しは、本の「あらすじ」や「概要」の紹介にスムーズに入るためのクッションのような使い方で用いられることが多い表現方法です。

いきなり、あらすじや概略の紹介に入るのは芸がないと思える場合に、演出方法の一つとして使える表現です。また、このクッションを入れることで、スムーズに感想文の文字数を増やすこともできます。

以下は、夏目漱石の『坊ちゃん』の感想文の書き出しの例です。

「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」という書き出しの通り、坊ちゃんの無鉄砲な失敗が、いっぱいのこの小説。ついクスクスと失笑させられる。しかし、この失笑は実に痛快なものである。それは結果としては失敗であっても、坊ちゃん自身の心はいつも正しく、純粋であるからだ。その失敗の一つ一つに、坊ちゃんの一徹な、どこまでもまっすぐに生きようとする意気込みがあふれていることが感じられるからである。物語は(あらすじの紹介に入る)・・・・

関連⇒『坊ちゃん』読書感想文書き方5作品・あらすじ(ネタバレ)

 
・・「冒頭部分をそのまま紹介」するスタイルをはじめ、以下で紹介する「名言」「格言」「セリフ」「結論」「教訓」「感動」「つぶやき」から書き出すスタイルは、どれもカッコ書きから書き始めるという共通点があります。カッコ書きから書き始めるスタイルは入賞しやすい感想文の王道です。
 

「名言」「格言」からはじめる

【例文】
「他人に善を尽くすとき人は自己に最善を尽くしているのだ。」マザーテレサの人生は、まさにこの言葉のような人生だった。

マザーテレサほど他人に尽くす人生を送った人間はいないのではなかろうか。そんな彼女だからこそ世界中の人から尊敬され愛されるに至ったのだと思う。

今回読んだ『伝記マザーテレサ』は、私に「他人に尽くすこと」や「献身的に仕事に向き合うこと」の大切さ、自分を超えて「世の中の進歩に貢献する視点を持つこと」の大切さを教えてくれる一冊だった。マザーテレサは幼いころ・・・

 
このように、その本からの学びを一言で表す「名言」「格言」「ことわざ」などをまず書き出し、それに続けて「この本は、まさにこの考えの大切さを私の心に刻みつけてくれる本となった。」・・のようにつなげます。

そして「なぜ、そのような学びを得ることができたか」を「説明」していくスタイルにすれば文章は書きやすくなります。苦手意識のある「感想文」ですが、実は「説明文や解説文」だと思えれば楽に書けます。「説明や解説」は「感想を書く」という捉え方より、意識的に書きやすくなるのです。

また、学んだ「結論」を先に掲げれば、読み手側も「そう思うに至った理由をこれから説明するのだな」と分かるため、理解しやすい文章になるわけです。
  
同じ心理は、以降で紹介する「印象に残ったセリフ」や、読んで感じた「結論」「教訓」「感動」「つぶやき」から書き出すスタイルにも当てはまります。
 

印象に残ったセリフではじめる

こちらも「名言」から始めるスタイルと同様のものです。作品の中で印象に残った登場人物の「セリフ」をはじめに掲げ、その後そのセリフを選ぶに至った理由や背景などを説明していくスタイルです。
 

読んで学んだ「結論」「教訓」からはじめる

【例文】
「無知ほど怖いものはない」私はこの本を読み、自分がいかに情報不足から、ある意味「無邪気なまでの決めつけ」を生活の中でしてしまっているかに気づかされることとなった。また「知らぬは仏」ということわざもあるが、人間は知らないことに対しては何らの抵抗も不安もなしに「大罪」すら犯してしまうものだということを、この本は私に教えてくれた。この本は・・・・

 

「感動」を率直に伝えることから入る

学んだ「結論」から入るのと同様に、読了後の「感動」「感激」をストレートに伝える表現も感想文らしく良い書き方です。いづれも、そのように感じた理由を、あらすじや背景、自身の過去の出来事などと絡めながら説明すればよい点は同じです。

【例文】
「ありがとう。なんと感動的な結末だろう」読了後、天井を見上げると映像がグルグル回っていた。漫画でもない小説なのに、映像が浮かび上がり、あたかも自分が主人公になったかのように、最後のパッピーエンドの場面がグルグル天井で回っていたのだ。「感謝します。ありがとう。ありがとう。何度も言いたい。何度も何度も・・・」この物語は~

 
※「ありがとう、ありがとう。」「何度もいいたい。何度も何度も」・・このように同じフレーズを重ねる表現は、単純ですが感動を伝える手法として大変有効なものです。

【例文】
10点満点で20点あげたいほどの作品でした。感激です。泣けます。本当に泣けます。この本に出合えて本当によかったです。この物語は~

 

心の「つぶやき」から入る

「つぶやき」から入る感想文は、本の内容に対し肯定的なものでも否定的なものでも利用できます。そのような「つぶやき」がでた理由を説明していくスタイルという点では共通しています。ただし否定的な感想の場合、入賞させるためには高度な内容が要求されます。

本の内容によっては「感動」や「感激」といった感情には至らない作品も多いものです。また、読了後、重い気持ちに押しつぶされそうになる作品や、悶々とした気分にさせられる作品などもありますが、そのような場合、読了後にポロッとこぼれた「つぶやき」をそのまま利用するスタイルは、書きやすいはずです。

【否定のつぶやきから入る例文】
「なんだよ、この結末は」この一言が、この本を読み私の心に浮かんだ率直な感想でした。それに続けて「その後の主人公がどうなったかが知りたいんだよ」との文句の言葉も浮かび上がりました。この物語は・・・

 
否定のつぶやきから入る場合「著者には、ぜひ続編を執筆いただきたい。そう期待させる一冊であった。」・・のようなまとめ方もよいでしょう。

また、否定的な内容の感想や、課題を残した作品に対しては、自身が思い描いた理想のストーリーとを対比させ、それを解説する感想文もよいでしょう。
 

疑問の投げかけから入る

「命は大切だといいます。ではなぜ戦争になるとあれほど簡単に人を殺せてしまうのでしょうか」など・・

こちらは読者の「答えを知りたくなる心理」を利用する方法といってもいいものですが、疑問の投げかけは、相手に対して「意図的に欲求をつくる行為」なのです。簡単にできる心理操作の1つですが、その後の文章(答え)に興味をもたせる効果を生みます。

応用例として「この本は私に次のような問いを与えてくれた。それは・・」とする書き出しも同じ効果を与えることができます。

【例文】
今回読んだ『○○』という本は、私に次のような問いかけを与えてくれた。それは「戦争を望む人間はいない。しかし太古の昔から科学が発達した今日にいたるまで戦争はなくなってはいない、それはなぜか」という問いである。物語は・・・

 
また「あなたは~。実はわたしは・・」式の問いかけスタイルも使いやすい書き出しです。

【例文】
あなたはこれまで人権について真剣に考えたことはありますか。実はわたしは、この本を読むまで人権についてしっかり考えたことは一度もありませんでした。

 

「もし」で始める

こちらも「疑問の投げかけ」と同様の心理に訴える書き出しですが、感想文の読者や自分自身に「疑問」や「矛盾」に気づかせるように仕向ける表現スタイルです。

ストレートに外から疑問を投げかけるのではなく、疑問や矛盾を内側から「湧き出させる」ような投げかけをする書き出しです。外からの「外発的問いかけ」ではなく、読者自身の内側から湧き出る「内発的問いかけ」を導き出させるための表現といえます。

【例文】
もし自分が生まれた時から周囲のすべての人間に無視され、食べるものがなく生きるために虫やネズミをつかまえて命をつないできた子供であったのなら、自分にとって「人間」とはどのような存在に思えるだろうか・・・。そのような環境で育った妓夫太郎にとって、人間は「鬼」以上の最も恨むべき存在に思えたに違いない。そんな妓夫太郎が人間に復讐すべく鬼になったとしても、妓夫太郎にそのことを責めることができるだろうか。この物語は・・・

 

関係ない話からつなげる

魔法の接続フレーズ「それと同じように」を使って関係ない話から無理矢理つなげる裏ワザ

共通点を1つ見つけられれば「それと同じように」「それと同じで」のフレーズを使うことで、あらゆるエピソードを1つの話の中で結合させることができます。

感想文の宿題に限らず、各種のスピーチや、あいさつなどの場面で応用できる「人生の知恵」の一つですので覚えておきましょう。

【例文】
先月、テレビで野球の試合を見ていると、セリーグでは現役最強ショートとの呼び声の高いジャイアンツの坂本勇人選手がエラーをした。結局そのエラーが原因で、一点追加となり相手チームが勝ったのだが、私には「まさか」としか思えない瞬間だった。普通にボールをつかみファーストに投げるだけの、何の難しさも感じないボール処理の場面で、名手の坂本選手が悪送球というあり得ないプレーをしてしまったのだ。「ありえないこと」「考えてもいないこと」が現実に起こった場合、ただただ呆然とするしかないのが人間なのだと思わされた瞬間だった。それと同じように、今回読んだ小説は、人間が予想外の不幸に対しては、いかに無力であるかが語られているものであった。そして予測や準備をしていない人間にとって、1つの不幸は予想外の連鎖的不幸を生じさせてしまうものであることが、あたかも自分が主人公になったかのような目線で感じさせる内容として描かれていた。本書は不幸を乗り越えた主人公の半生を描いた物語であるが、私にとっては実生活で役に立つ「実用書」のような意味を持つ作品であった。物語は・・・

 

最近のニュースからつなげる

最近のニュースを紹介する場合、読者であるあなたが「社会を意識している人間」であることを印象付けることができます。言い換えれば、社会性を意識しながら生活している「成長した人間」であることを間接的にアピールできるわけです。

最近のニュースで・・・・。私はこのニュースが気になり、共通する○○をテーマにした世界的名作『○○』を読んでみようと思うにいたった。

 
実社会の話題と本の感想を絡めることで、身近な事例を挿入したり、多角的で現実的な考察ができるため、文字数が足りなくなるといった問題も防ぎやすい書き方です。
 

数字の紹介から入る

「この本を選んだ理由から始める」のところでも利用しましたが「私がこの本を読むのは、実は4回目になります」のように文章に興味付けさせる強力なノウハウの一つが「文章に数字を入れること」なのです。

その他の例としては・・

「私が芸術家の生涯について書かれた本を読むのは、今回の本で実に7冊目になります。」
「この夏、私は18冊の本を読破した。ひと夏の読書量としては自己新記録を~」
「私の17年間の悩みを一瞬で消した一行の言葉。」
「私の人生を変えた192ページ。」など。

また、本文の中から発見した数(個数・回数)や、あなたの知っている統計的な事実などを引き合いに出すのも良いでしょう。人間は自分の知らない新しいこと(ニュース)に対して反応を示す心理があります。つまり、文章に読み手の知らない具体的な数字を盛り込むことで、読者に「ニュース性」を与えることができ記事に引き込ませる効果を生むのです。次の例文を読むとおそらく「エッ」と思うのではないでしょうか。

【例文】
韓国では毎年約200万頭の犬の肉が食用として消費されています。また、日本ではクジラの漁に対し海外から強く非難されていることがニュースでよく取り上げられています。そればかりか、日本ではいたるところで「マグロの解体ショー」が実施され人気の「ショー」の一つになっています。このような事実を知るたびに、私は今日の人間の「食」に対する意識に違和感をもつようになりました。今回『いのちの食べ方』という本を題材に選んだのは、そんな私の、人間のもつ「食」に対する考え方を・・

犬食関連動画⇒ 閲覧注意
(ぜひ知っていただきたい今世紀の人類の課題「食」の問題の一例です)

 

読む前の予想と実際の感想とのギャップの紹介ではじめる

その本を読む前に、タイトルや表紙から受けた本の内容の予想やイメージと、実際読んでみた感想とのギャップを伝える書き出しで入る。

【例文】
私はこの『○○』を手にしたとき、おそらく○○○○○○といった内容が書かれている本だと予想した。しかし、その予想は良くも悪くも大きく外れることとなった。実際読んでみると、この本は・・・

 

「体言止め」ではじめる

文章は通常「○○です。」「○○である。」「○○だ。」のような表現で終わります。これに対して「体言止め」の表現は「名詞でおわる表現法」です。(名詞のことを「体言」ともいうためです)例えば・・・

 「青い空、白い雲」
 「鐘が鳴るなり法隆寺」

このように、体言止めを使うと、一般に「素晴らしさ」や「感動」を強調することができます。

【例文】
大自然の驚異。そして親の愛。この物語の中心はこの二点に集約できるだろう。私はこの夏、小さな勉強部屋の片隅で大きな感動を得ることになった。なんと有意義な時間であったことか。

 

【例文】・・体言止め3連発の例
大音響で鳴く蝉の声、カンカン照りの太陽の光、むせかえるような若葉の香り。九州の実家には、今年も相変わらずの夏があった。毎年繰り返されるこの風景を、私は何度見てきただろう。

しかし、今年の夏は、ある一冊の本とのであいによって、これまでとは一味違う夏の終わりを迎えることとなった。この夏、私は生涯わすれることがないであろう一冊の本と出会ってしまったのだ。その本こそ・・・

 

「人のタイプの分類」ではじめる

「人間には二つのタイプが存在する。それは、○○な人間と、そうでない人間である。」

「人間が2つのタイプに分類できる」となると、読み手に「では自分はどちらのタイプか?」と思わせることができるため、読者を文章に引き込むことができるわけです。文章に興味付けさせるための心理操作的文章術といってもよい手法です。

【応用例】

・「人間には二つのタイプが存在する。それは、夢を夢で終わらせるタイプの人間と、努力によって夢を現実化させる人間である。この本の主人公である○○は、まさに努力によって夢を叶えた代表のような人であった。」

・「世の中には二つのタイプの人間がいる。それは社会性を意識した振る舞いのできる人間と、独善的な人間である」

・「世の中には政治に関心のある人間とそうでない人間がいる。実はこれまでの私は、まさに後者であった。しかしこの本を読み・・・」

・「大人の判断とはどのようなものであろうか。世の中には大人と子供がいる。しかし、大人の中にも独善的な判断しかできない子供のような人間もいる。」

・「戦争を経験した人間とそうでない人間とでは、戦争に対する捉え方がまるで違うものだ。」・・など。

(おまけ)「人間には二つのタイプが存在する。それは、なんでも二つのタイプに分けようとする人間と、そうでない人間である」(笑)

 

手紙風に始める

おそらく、このような文章を「感想文」として認めるのは日本の学校ぐらいでしょう。アメリカやヨーロッパなら、自分の意見を論理的に語るように改善の指示が出されるはずです。

しかし、以下のような「主人公への手紙」や「感想文を読む人への手紙」のような書き方でも、なぜか入選してしまうのが日本の学校教育です。

①「主人公に宛てた手紙」のように書きだす。

【入賞作品の例】
「拝啓 アンネ・フランク様・・・」

 
➁「感想文を読む人への手紙」のように書きだす。

【入賞作品の例】
暑い日が続きますね。あなたは、この夏休み、どう過ごされましたか。実はあなたに勧めたい本があるのです。「忙しい」が口癖でちょっと疲れ気味のあなたへ。
「モモ」という本です。題名からは何の本だかわかりませんよね。西独のM・エンデという人が書いた童話です。でも単に童話といいますが、この本には「忙しがり屋」の大人達へのメッセージが込められています。
モモは一人の少女です。いつ、どことも知れぬ街に住んでいる「浮浪児」で、学校にもいけず・・・

 
「暑い日が続きますね。」・・・(^∇^)″
 

主人公への語りかけで始める

「手紙風」の感想文と同様に、昔からなぜか「主人公への語り掛け調」で書き始めるスタイルで入選した作品も多く存在します。

【例文】
アンネ、辛かったね。君はものすごく頑張ったよ。だから天国ではゆっくりくつろいで欲しいんだ。僕はね、君が生きていたころのことを考えると申し訳ない気持ちでいっぱいになるよ。そして何もできなかった自分に腹が立ってくるんだ。アンネ、本当にごめん。だから僕は考えたんだ。世の中から戦争をなくすために僕にできることはなにかってことをさ。それを考えて実行することが、せめてもの君へのお詫びになるんじゃないかって。僕は君に誓うよ・・・

 
・・・私には恥ずかしくて絶対に提出できない書き方です。(><)
 

自分の読書生活の紹介から入る

これも自己紹介から入るパターンの1つとも言えますが、読書感想文を書くにあたり、初めの部分で自己紹介的に「これまでの自分のダメな読書生活」を伝えることで「本の内容についての感想」のほか、違和感なく、次の内容を盛り込んだ感想文にすることができます。

「読書の大切さに気づいたこと」
「情報を伝え残すことの大切さに気づいたこと」
「自分のダメな読書生活を反省させられたこと」

遺伝以外の方法で何かを伝え残すことができるのは人間だけです。(←これ大事)この点が動物と人間を分ける点でもあり人類の進歩の源でもあるのですが、この「伝えることの大切さ」を大発見させてくれたのが今回の読書でした・・・。という内容にするわけです。

冒頭で「ダメな読書生活」や「読書の価値を軽く見ていた」ことを紹介することで、後半の「発見の喜び」を大きく感じさせる演出になるというわけです。

それゆえ、この方法は、違和感なしに「どのジャンルの本でも利用できる字数を増やすテクニック」としても使えます。

「自分の読書生活の紹介」+「読書の大切さの発見」

【例文】
読書感想文の課題が出た時、私が真っ先に考えたことは「いかに読みやすい簡単な本を選ぶか」だった。なにしろこの本を読むまでの私は、年に読む本の数が「一冊以下」という恥ずかしいほどの読書嫌いだったのだ。しかし、偶然手にしたこの本によって、私の読書人生は大きく好転することとなった。

この本は・・・(中略)

人が何らかの「判断」をするためには「判断材料」が必要だが、その判断材料を自己の経験だけに頼っていては材料が少なすぎるはずだ。その経験を補ってくれるものが「本」であり「読書」なのだと今回の読書は私に気づかせてくれた。

我々現代人は、先人達が残してくれた豊富な情報があるからこそ、昔の人に比べて正しい判断がしやすいのであり、よりスムーズに物事を進めていくことができるようになったのもそのお陰だ。伝え残すこととは、なんと偉大なことであろうか。

私は本書から、著者が本来的にこの本によって伝えようとしていた現代社会に存在する○○の問題点や、○○を意識することの大切さ以上に、この「伝え残すことの価値」を発見できたことが嬉しくてたまらない。そのため、これからは判断材料の分母を増やす意味での読書をもっと多くしなければならないと猛省させられた。

また読書により情報を大量にインプットするほか、SNSなどを通じ、みずからも情報を積極的に伝え残すようにすべきだとも思うようになった。読書嫌いだった私にこのような「意識改革のきっかけ」を与えてくれた本書の著者には最大限の敬意と感謝の気持ちをささげたい。

 
・・・これだけで、すでに約630文字。本の内容に関係なく使えます。(笑)
 

否定から入る

通常、感想文の読み手は、本の内容を肯定している感想を想定していますので、否定から入る書き出しは読み手にインパクトを与えます。

【例文】
今回、私は文学史に残る名作とされる、○○著の『○○○○』を読んでみた。その結果、私は「大失敗した」と思った。そればかりか腹立たしい気持ちにさえなった。それは「なぜ、私はこんなに素晴らしい作品を、これまで読んでいなかったのか」と思わせる感動的な作品だったからだ。

 
※失敗は過去の自分の方でした、というオチをつける書き出しです。否定で入ることで、結果的に絶賛ぶりを強調することになる奇抜な書き出しです。

これに対し、以下は、作品の内容まで否定する例文です。そのためコンクールに入賞させるには、感想文全体に高度な内容が要求されます。そのため、どうしても書けない時の「参考までに」という意味で掲載いたします。

【例文】
私は年間、約40冊ほどの本を読んでいるのだが、その中には面白い本もあれば、当然ながら「つまらない本」もある。その中で、この本は、どうにもこうにも私の心に響く部分がない「つまらない本」であった。

私にとって「心に響かなかった」という大事実の「感想」が現に存在するのであるから、それを偽るわけにはいかない。さらに加えれば「なぜこの本が他の多くの作品を退け課題図書に選定されたのか」という疑問さえ浮かんだほどだった。

しかし、そのことが私にとっての「心に響く本の条件」や自分に合った「読書のスタイル」を考えさせる切っ掛けを与えてくれることとなった・・・

 
ポイントとしては、結果として、この読書によって「ダメな本であったからこそ得られた学びや発見」を伝える内容にすることです。本の内容というより、本を切っかけとして得られたものや、発見できたものを書くという視点です。

また「ダメな本」と認めることで、驚くほどスンナリ感想文が書けるようになるはずです。それは人間のもつ「批判好きの心理」が活かせる書き方だからです。(^∇^)″

実際、ほとんどの課題図書や名作が、読んでみたら「つまらない」「期待外れ」であるため、それに対して「感動した」「衝撃をうけた」といった を書かずにすみ、心に素直な書き方であるともいえます・・(~_~;)

この書き方については、専門のページがあり、そのまま使えるテンプレートも書いてありますので、ご参照ください。
関連⇒ 読書感想文の書き方【つまらない本・面白くない本】編

また、著者の意見が特定の方向に偏っていると感じた場合、以下のような「アンチ側の意見」「挑戦的な感想」を書き進めるのもよいでしょう。難易度は更に高くなりますが、自説を強く訴えたい場合の入り方です。

この本の内容に対し、たった2000文字というスペースで感想を書けという課題は私にはそうとう難しい。むしろ本一冊分でも書けるほどだ。本書を読み、私は著者の考え方の甘さに憤りさえ感じた。お会いして話す機会があるなら、私はおそらく相当きつく意見をぶつけるに違いない。この本は・・・

 
※締めくくりは「自分とは真逆の考え方を知ることができ、そのような人と、これからどのように調整を図るべきかという新しい課題がみつかった」・・のようにすれば「学び」や「新たな課題の発見」につなげられます。
 

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参考用に過去の入賞作品の紹介ページを作りましたので、ご活用ください。

【最重要ページ】感想文を書くにあたっての「コツ」「構成」「話の広げ方」などの詳細は下記のページに掲載しています。(気になる審査基準も掲載)

読書感想文の書き方【構成】
(テンプレートつき)

 

書き出しには「興味づける仕掛け」を施す

2024年の「読書感想文対策」には
是非こちらのページをご覧ください

yajirushi4

2024課題図書の紹介ページ(書き方の例文つき)
読書感想文の「定番本」の紹介(書き方の例文つき)

読書感想文の書き方【つまらない本・面白くない本】編

感想文は大変な課題ですが、なんとか最後まで頑張ってください(^o^)ノシ
 

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